『勤務地シンガポール』

シンガポールで23年働き・起業した日本人が伝える現地就職・生活のリアル情報

テスティモニアル


 友人の紹介でKさんが今日オフィスを訪ねてくれました。

 40代前半の華人系の男性で長らく営業やマーケティングに従事してこられた方です。実際お会いしてみると、明るく爽やかな印象を相手に与える方で、私も素直に面談に入っていけました。

 話はちょっと脇にそれますが、「第一印象」はとても大切です。人は最初の3分くらいで相手の事を判断してしまい、残りの時間はその自分の印象が正しいかどうかの確認に使っていると、どれか思い出せませんが、最近読んだ本の中だったか、書かれていたように思います。いずれにしてもこの相手に与えた第一印象は、あとで自分が変えようと思っても変えられませんからね(笑)。

 そのKさんですが、これまでの職歴を拝見すると、新卒で務めた会社に8年在籍し、その次の会社は12年となっておりました。転職が頻繁なこのシンガポールにおいてはKさんのような方はまれかと思います。

 で、Kさんの直近の就業先はとみると、なぜかその直近の会社の在職期間は1年半となっていました。当然何か理由があるなと直ぐに感じます。

 「ええ、実は会社の方からリトレンチされたのです。」とKさん。
 リトレンチと言えば「解雇」の意味で穏やかではありません。話をお聞きしたら全くもって会社の都合によるものでしたので、私としては安心しました。

 曰く、会社が政府発注のプロジェクトを入札で競り落とし受注した。が、見積もりが大幅に間違っていて、当初から億単位の赤字が出ることが確実視されていた。しかし、政府のプロジェクトといこともあり赤字覚悟で敢行。プロジェクト自体は無事終了したが、その前後から会社は部門の閉鎖や人員整理などリストラを敢行。Kさんは全く別の部門に勤務していたのだが、ある日突然上司から呼ばれ、2日間の通知で解雇となった、とのことでした。

 Kさんの人柄ゆえにとても同情しました。でも当の本人は既に気持ちを切り替えていて、物事に対していたって前向きです。つい一週間前に起こったことなのに、この辺の感情のマネジメントは素晴らしいです。

 Kさんのようなケースは会社の方から、「この度は個人の落ち度ではなく、会社の都合で解雇という事態になりました」というレター、そしてそのレターの中にその人物を推薦する一文、「御社がこの方の採用を検討されるのでしたら、喜んで推薦致します。」を書いて頂くのが良いと思います。そのようなレターはこちらでは「テスティモニアル(Testimonial)」と呼ばれています。言うなれば、在職証明書と推薦状が一緒になったようなものです。

 このテスティモニアルですが、離職が解雇によるものでなくとも、通常の転職によるものであっても、できれば書いてもらった方が良いです。これがあると、その人物の採用を検討している企業に対して、①自分に落ち度があって解雇されたのではないこと、または②転職のために離職したが“円満退社”であることが証明されるからです。

 Kさんに戻りますが、そのテスティモニアルの有無をお聞きしましたら、なんともらっていないとのこと(笑)。「いやー実は、ボスも本当に申し訳ないと言ってくれて、必用であればテスティモニアルを書くと言ってくれたのですが、そのときの私は突然のことでかなり気が動転していて、また彼に対して怒っていたので、咄嗟に“いらない”と言ってしまったのです。」とKさん。上手く気持ちの切り替えが出来ていたKさんでしたが、まさにその時はやはり感情を抑えることができなかったようです(笑)。難しいことですよね。

 「必用なときはいつもで言ってくれ、と言われているので、後でお願いしてみます。そうですよね、それがあった方が次の転職が決りやすいですよね。私ももう40代で、だんだんと引き合いが少なくなってくるは分りますから、必ずテスティモニアルを書いてもらおうと思います。」

 それからしばらくしてKさんは帰られましたが、彼の就職先が一日でも早く見つかることを願って止みません。