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2026年シンガポール人事・雇用トレンド総まとめ|EP・COMPASSと採用戦略の最新動向

 

2026年シンガポール人事・雇用トレンド総まとめ|EP・COMPASSと採用戦略の最新動向

2026年、シンガポールの人事・雇用環境は大きな転換期を迎えています。
EP(Employment Pass)・COMPASS制度の本格運用、柔軟な働き方(FWA)の制度化、採用環境の変化など、「これまで通り」では通用しにくい局面に入っています。

本ページでは、2026年時点で押さえておくべきシンガポールの人事・雇用トレンドを体系的に整理し、日系企業の人事・採用担当者、経営層、これからシンガポールでの採用・転職を検討する方に向けて、実務視点での全体像と考え方の軸をまとめています。

このページでわかること

  • 2026年のシンガポール人事・雇用政策の全体像
  • EP・COMPASS制度が採用実務に与える影響
  • 柔軟な働き方(FWA)への企業対応の考え方
  • 今後の採用・人材戦略で重要になる視点

EP・COMPASS本格運用で加速する「高付加価値人材」へのシフト

2026年1月から、COMPASSによるEP審査は「制度導入期」から「本格運用フェーズ」に入り、給与ベンチマーク、学歴・資格リスト、Shortage Occupation Listなどが最新の労働市場データに基づいて更新されています。

その結果、従来以上に給与水準・職務内容・スキルセットの妥当性が厳しく問われるようになりました。特に、セクター別・年齢別の給与水準の見直しにより、市場水準を下回るオファーではCOMPASS上の評価が得られにくくなっています。

採用現場では「EPの給与要件が上がり、日本人の現地採用が難しくなった」という声も聞かれますが、見方を変えれば、本当に必要な高付加価値ポジションを明確に設計できる企業ほど、優秀な外国人専門職を確保しやすくなる構造がより鮮明になっています。

日系企業にとっては、日本本社の給与テーブルを前提とした採用設計では限界があり、シンガポール市場を前提としたグレーディング・レンジ設計、S Passやローカル採用を含めた人材ポートフォリオの再設計が不可欠となっています。


柔軟な働き方(FWA)の定着と「制度としての運用」への対応

もう一つの大きな流れが、柔軟な働き方(Flexible Work Arrangements=FWA)の制度化です。政府・労使による三者構成のガイドラインが整備され、従業員が正式にFWAを申請し、企業が公正なプロセスで対応することが求められるようになりました。

FWAには、勤務時間の柔軟化、勤務場所の柔軟化(在宅・ハイブリッド)、業務量の調整など複数の形態が含まれます。企業側には、申請・判断・却下のプロセスを明文化し、却下する場合はビジネス上の合理的理由を説明する責任が生じます。

人事・マネジメントとして重要なのは、「やるか・やらないか」ではなく、どの職種・等級・役割で、どこまでの柔軟性を認めるのかを設計し、現場で説明できる状態にすることです。


採用環境は減速局面へ──それでも続く人材不足と高コスト

2026年序盤のシンガポールでは、雇用は引き続きプラス基調ながらも成長スピードは鈍化し、企業の採用姿勢はより選別的・慎重な方向へシフトしています。単純なヘッドカウント拡大よりも、生産性向上や既存人材の活用が重視されています。

一方で、構造的な人材不足や高コスト体質は依然として解消されておらず、特にデジタル領域や高度専門職、現場を支える中堅層では採用難が続いています。その結果、契約社員、プロジェクトベース、アウトソーシング、RPOなどを組み合わせた柔軟な人材活用モデルが重要視されています。


2026年に求められるHR実務|制度対応と人材戦略の両立

2026年のシンガポールHRには、EP・COMPASSやFWAといった制度対応を「守り」で終わらせず、戦略的な人材設計へと昇華できるかが問われています。

採用初期段階からのポジション設計、給与レンジ設定、要件定義の精緻化に加え、オンボーディング、評価、リスキリング、リテンションまでを一貫して見直すことが、競争力の源泉となります。

AIやデータ活用を前提としたHR運営も加速する中で、どの業務を標準化・自動化し、どこに人的リソースを集中させるかという判断が、企業の中長期的な成長を左右していくでしょう。


まとめ|変化の時代に、人事は「設計力」を問われる

2026年のシンガポール人事・雇用環境は、規制強化、タイトな労働市場、高コストという複雑な条件が重なる局面にあります。その中で重要となるのは、EP・COMPASS、柔軟な働き方、生産性、スキルベースの人材戦略といった視点です。

今後は「人を増やす採用」よりも、「限られた人材の付加価値を高める投資」がより重要になります。制度対応を守りで終わらせるのではなく、人材戦略を再設計する“攻めの年”にできるかどうかが、企業の将来を左右するでしょう。


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