離職勧告-すぐに出してはいけない辞表
昨日の記事およびKさんに関連して、以前相談を受けたケースを思い出しました。これはKさんのように会社の都合で離職を勧告された場合にとても大切なファクターとなりますので書いておきたいと思います。
入社の際、企業側と従業員側とで雇用契約書を締結しますが、その雇用契約書の中には離職の際はどうするかが通常明記されています。
一般的なのは、「一ヶ月ノーティス」、つまり辞める方も辞めさせる方も、1ヶ月の事前通知が必要ですよということです。もし直ぐに辞めたい、辞めさせたい場合は、「一ヶ月分の給与に相当するお金を払う」ということで離職または解雇できます。とてもシンプルです。なにももめることはなさそうですが、もめる場合も結構あります。それはどういう時かと言いますと、「雇用契約書に明記されていないノーティスや補償金」で辞める場合や辞めさせる場合です。
思い出すのは以前遭遇したTさんのケースです。
Tさんはある日上司に呼ばれこう告げられます。「会社の状況が良くない。ついては大変申し訳ないが辞表を出してもらって、1週間で辞めてもらいたい。会社の財務状況の苦しいので補償金が給与の一か月分で勘弁してくれ。」
Tさんは突然のことに大変驚きましたが、状況に納得し、仕方がないと辞表を提出、そして1週間後に離職しました。
ところが問題はその後に起きました。
離職はしたもののTさんはどうしても納得が行きません。改めて入社時にサインした雇用契約書を読み返してみると、辞める場合も辞めさせる場合も双方「3ヶ月の通知期間を要する」と書かれていました。そうでない場合は、「3ヶ月分の給与に相当するお金を支払う」となっています。Tさんはマネジメントレベルのポジションでしたので、通知期間も少し長めでした。
「本当であれば3ヶ月の通知期間または給料3か月分のお金がもらえたのに、1週間で辞めさせられて補償も給料1か月分だけ。これは納得が行かない。」とTさんは考えたそうです。
その後、前の雇用主と数度話し合いを持ちましたが、向こうは「会社が大変なので勘弁してくれ。」の一点張り。Tさんは、これでは埒が明かないとMOM(Ministry of Manpower=シンガポールの労働省、雇用関係を所管するところ)の窓口へ相談に行きます。
Tさんが一通り説明を終えた後、「いやーそれは本当に悪い会社ですねー。」の一言を待っていたTさんに対して、MOMの担当者はこう聞きました。
「あなたは辞表を出して、会社側は受け取ったのですね?」
えっ?なんでこんなことを聞くのと思ったTさん。「ええ、出しました。でも半ば強要されての辞表だったのです。辞表を出さなければ一方的な解雇になると脅されました。」
「でもあなたは辞表にサインをして提出して、会社側はそれを受理したのですね?」と担当者。「はい。」とTさん。
Tさんによりますと、MOMの見解は次の通りだったそうです。つまり、「辞表を提出して会社側が受け取った時点でMOMとしては雇用者と被雇用者の間で、“両者の合意が成されたもの”と見なす。通知期間やそのた補償も含めて。その“合意”が全てであって、その後雇用契約書に立ち戻って話をしたい場合は、それはもう弁護士に話をしてもらって裁判で争う以外ない。」とのことだったそうです。
シンガポールは雇用法が企業側にわりと有利にできているといわれています。従業員の解雇はそれほど難しいことではありません。解雇にあたって理由の提示さえ必要ないと言われています。そのため、上記のTさんのケースのように会社の都合で辞めさせられる場合は、テスティモニアルをしっかりと書いてもらったりするなど、お願いしたいところは全てはっきりとさせてから辞表を提出するのが肝心かと思います。
今日はちょっと重いたい内容だったかも知れません(笑)。
それでは皆さん、良い週末をお過ごし下さい!