『雨がこのまま続くか、晴れるかは蓑を着て歩いてみると
よく分かります。湿気が蓑の中にこもるようなら、雨は
降り続きますが、湿気が蓑の中にこもらないようになると
雨は上がります。今、枯れ木を探しにそのあたりを歩いて
みましたが、蓑の中に湿気はこもりません。雨は降って
いますが、この雨は続く雨ではなく、やがて止む雨です。
雨足の音でも分かります。まず間違いなく、夜半ごろ雨は
上って、冷えます。そして明日は上々の天気となるでしょう。』
新田次郎著「劒岳」より
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劒岳 〈点の記〉 (文春文庫) |
| クリエーター情報なし | |
| 文藝春秋 |
小説はそれなりに読みますが、感情が移入されるもの、またはそうでないものいろいろとあります。
先週この著名な山岳小説を、朝夕通勤電車の中で読み始めた頃からか体調に変化を感じました。
大雪渓を勇敢に登山する小説の登場人物たちの姿を、あたかも自分もその場で見ているような感覚になり過ぎ、また彼らと一緒に吹雪や暴風雨を感じてしまったせいか、風邪を引いてしまったようです(笑)。
この小説は日露戦争直後、前人未到といわれ、また決して登ってはいけない山と恐れられた北アルプスの劒岳山頂に、測量のための三角点設置の命令を受けた主人公、測量官の柴崎芳太郎と彼を支えた測夫、そして人夫たちの物語です。
上記の言葉は、劒岳登頂前夜。常用人夫の宇治長次郎が測量官柴崎芳太郎に語った言葉で、それによって柴崎測量官は翌早朝の決行を決断します。明治40年、西暦1907年7月の物語です。
それにしてももう一つの驚きは「蓑」です。ただ雨風を凌ぐだけではなかったのですね(笑)。湿気が蓑の中にこもる、こもらないという感覚は一体どのようなものでしょう。現代においてはもう知る機会はなくなりました。
さて10月が始まりました。あと三ヶ月で2010年も終わります。登山で言えばまさに天幕を後にして最終登頂を試みる頃だと思います。足元をしっかり確かめながら生きたいと思います。
追記:
書き終わった後に少し検索してみて分かりました。昨年この小説が映画化されていたのですね。まったく知りませんでした(笑)。映画のサイトはこちらから→映画「劒岳」
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