『勤務地シンガポール』

シンガポールで23年働き・起業した日本人が伝える現地就職・生活のリアル情報

レントゲンに映る影 その2


 「ド、ドクター、レントゲンに映っているその“白い影”は一体なんですか!?」

 昨日の記事の続きです。

 今回私がお世話になったクリニックは、シンガポールでも大手のクリニック・チェーンで、全島至る所にあります。オフィス街には、まるでスターバックス・コーヒーのように、2、300メートル間隔であるような感じです。

 うちのオフィスの近くにあるその“アウトレット”にはドクターが常時2名、それにナース兼事務スタッフが計2、3名のこじんまりとしたところです。検査ラボやレントゲン室なとはなく、風邪を引いたとかちょっと体の調子がよくないとか、そのような症状を観る出先ですので、レントゲンを撮るとなると、系列の“母艦”的なところへ行かなければなりません。

 「それでは佐藤さん、○○ビルの5階になりますので、昼食の後に来て下さい。私も午後からはそこで診察ですから、2時に来てもらったらまずはレントゲンを撮って、その後そのレントゲンを基に診察しましょう。」

 今回担当してくれたドクターが午後からそこへ行かれるというのはラッキーというか心強いです。全く別のドクターが担当になった場合、また一から今回の経緯を説明しなければならないかも知れませんので。

 「分りました。それでは2時にそちらへ伺います。」と言って、ひとまずそこのクリニックを後にしました。

 ちょうどオフィス街は昼時で、沢山の人たちがそれぞれのグループでランチをとっているのが目に入って来ます。(やはり健康でご飯が美味しく食べれることは素晴らしいことです!)

 しかし、と、クリニックを出て一人歩いていると、どうしても弱気なことを考えてしまいます。“それにしても、今回の咳、肺の病気だとしたら一体何になるんだろう。もしかしてマイコプラズマか?、いや、それは無いだろう、だって熱は無いし体もだるくない。だとしたら、次の可能性はなんだ? もしかして肺結核か!?これって労咳といって昔は不治の病だ。明治の頃、多くの天才的な詩人や文人がこの病に倒れたのだ。もしかして俺も明治の文人達のように。。。天才は早死にするからなぁー(弱気) いや、待て待て、以前手相を観てもらったら、あなたは長生きの相だから老後の分までしっかり金を貯めておけ、と言われたよなぁ。と、言うことは今回も大丈夫か。ま、志半ばで死んでしまうことは無いだろう(急に強気)”。 などと、勝手にあれやこれや考えながら、目的の母艦クリニックへ向かいました(笑)。

 昼食を取ったあと、そのビルの5階にある母艦クリニックへ向かいました。これはシンガポールのクリニックや病院の典型かも知れませんが、ドクターたちは華人系が多いのですが、その他ナースや受け付けのスタッフに至るまで、ほとんど非華人系、ぱっと見ただけでは、フィリピン系やインドネシア系が目につきます。外国人でしょうか。地元系では、マレー系やインド系のスタッフが若干目につきました。

 私を担当してくれたレントゲン技師はどうも地元マレー系かインドネシア系の女性でした。「はい、上のシャツを脱いでここに立って下さい。」と、顔に表情はなく、言葉だけで淡々と指示され、息を吸ったり吐いたりしている内にレントゲン撮影は修了しました。その後約5分くらい待たされた後、名前を呼ばれてごく機械的に私の肺が映ったレントゲンを渡されました。「ではこのレントゲンを向こうのカウンターに持って行って、ドクターの診察を受けて下さい。」私は礼を言ってその場を離れました。

 今回私を担当してくれたドクターは、お年はとても若そうな方です。多分まだ20代でしょう。待合室で座って待っていると、そのドクターが到着されました。そして間髪をいれずある看護婦さんが私のレントゲンを持って診察室に入って行くのが見えました。“いよいよだ。今回のこれで、労咳かどうか分る。労咳だったら俺は天才で、そうでなかったら普通の人だ。”などと考えながら名前を呼ばれるのを待っていると、いきなりバーンと扉を開ける大きな音がしたと思ったら、なんと私の担当のドクターが、私のレントゲンを持って、別のドクターの所へ急いで入って行ったではないですか!

 どっ、どーしたんだ一体。こっちは事の急変に驚きます。“もしかすると俺の肺に何かあったんじゃないか?あのドクターはまだ若く経験不足なのでよく分らないのでは?労咳と診断する前に経験のある先輩ドクターにダメ押しというか念には念を入れるため聞きに行ったのでは??”などと心が急んネガティブな考えに占領されて行きました。

 「佐藤さん、中へどうぞ!」

 しばらく経った後、先輩ドクターの部屋から自分の診察室へ戻ったドクターが私の名前を呼びました。“とうとう審判の時が来た”とばかり、私はその部屋へ入って行きました。

 ドクターの机の上に私の肺のレントゲンが後ろからの蛍光灯の光によって鮮明に映し出されていました。私の肋骨が白く映し出されています。

 「どうぞここにお座り下さい。」言われるままに腰を下ろすと、ドクターが急に改まって鼻をずり落ちてきたメガネを左手の人差し指ですっと上に上げました。“やっぱり俺は労咳だったのだー!ドクター、本当のことを言ってくれー!”と、私は心の中で叫んでいました。

 「佐藤さんの肺ですが、、、」 “労咳か!?”
 「全く異常ありません。」 “へっ??、いっ、いじょーナイって?”
 「まあとりあえず咳止めの薬を処方しますから、それを飲んでみて下さい。」

 “で、でも。レントゲン写真向かって右下になんか白い影があるじゃないですか。これはなんだ。末端の細胞が既にやられているってことなんじゃないですか!??”

 意を決して質問すると、ドクターからあっけない答えが返って来ました。
 「あ、これ? この白い影は、あなたの心臓ですよ。」

 “私のシンゾー、、、心臓。。。”
 「なあんだ佐藤さん、もしかして心配してたんですかー?」と、ドクター。
 その瞬間にアハハハハ、と二人で一緒に笑い出しました(笑)。“でもさっきドクターは血相を変えて別の部屋に入っていったじゃないですかー。”という疑問も少し残りましたが、その疑問も、全く問題ありません。これはあなたの心臓です。と、言われて羽毛のように軽くなりどこかへ飛んでなくなりました(笑)。

 ま、いずれにしても今回、心配した労咳でなくて良かったです。やはり私は天才などではなくフツーの人でした(笑)。でもこのフツーの人が一番良いです(笑)。

 何もかも過ぎ去ってしまうと、とたんに気になるのは「料金」、お金です。今回月曜日の分も合わせて、一連の診察に掛かった費用はいくらだと思いますか?シンガポールドルで、230ドルです!現在のレートで日本円に直すと、約1万7千250円です。円安だったら2万円を超えています! シンガポールは100%自己負担なんですよねー(苦笑)。やはり健康が一番です。 皆さんもどうぞお気をつけて。