
「佐藤さん、2月の旧正月の時にスタッフに渡すアンパオの件だけど、皆さんどれくらいあげてんのかなあ。」
金曜日の午後、さあもう週末だ、くらいの気分でくつろいでいると、あるお客様から電話が入りました。
“アンパオ”とは漢字で「紅包」と書き、たぶん、正確な発音は“ホンパオ”に近いのだと思いますが、シンガポールで耳にするときは“アンパオ”に聞こえるので、皆さん“アンパオ”と言っています。これは日本で言うところの「お年玉」で正月に年上の者が年下に、働いていて収入のある者が、働いてなくて収入のない者に、親が子供に、子供が年老いた親に、そしてオフィスでは雇用主が従業員に、といった具合で、「お年玉」をあげる慣習です。その袋は漢字の通り真っ赤な色をしています。
「さあ、お気持ち次第だと思いますが、オフィスでだったら、一人20ドルくらい(千五百円くらい)でいいのではないでしょうか。」と、私。実際私は20ドルを超えるアンパオは過去頂いたことがないので(笑)。
「そうですか。。。実は本社のSに聞いたのですが、Sは香港に駐在していたことがあって。。。それで彼曰く、“50ドルくらいでいいんじゃないですか”っていうことだったから50ドル包もうかと思っているんだけど、他の皆さんはどうなさっているのかと思って。。。」
「なるほど、そうでしたか。50ドルだったら皆さん喜ばれると思いますよ。」「でも、一応、地元の人材会社を経営している友人にも聞いてみます。シンガポールで一般的なアンパオの額ってあるの?と。」そう言って、私は一旦電話を置かせてもらいました。
で、友人のデニスさんに電話で聞いてみると、答えとしては、①あくまでも気持ちなので、額については、いくら、という決まったものはない。②10ドル、20ドル、はたまた何百ドルというのもある。とのことでした。そう、あくまでも“気持ち”なのです。
「じゃあデニスさん、うちのお客さんが50ドルづつって言っているんだけどどう思う?」と彼に聞いたら、「いいと思う」と快速で返事が返ってきたあと、なんと妙なことを言い始めました。
「でももし、アンパオが50ドルを超えたらCPFを払わなければならないよ」と。
CPF、昨日のブログを読んで下さった読者の方々にはもうおなじみのCPFです。なんと!50ドルを超えるお年玉に関しては、払う雇用主の方はその額の14.5%、でもって、従業員の方はその額の20%をCPFとして払い込まねばならないというではないですか!
「デニスさん、アンパオってお年玉じゃん?そのお年玉にもCFPがかかんの?」
答えは「YES」です。
要は、特に華人系でそれもファミリー系の企業の中には、一般的に12月に払われるボーナスをその12月に払わず、もうちょっと待てば旧正月なのでそれまで保留にしておき、休みに入る前に、そのボーナスをお年玉という意味も含めて支給するといった企業がけっこうあるそうなのです。ボーナスであれば、当然企業側はその額にCPF14.5%がかかってきますから、企業としては余分な出費となります。でもここに抜け穴! それがもし「アンパオ」だったら!何十万、何百万というボーナスの方も中にはいらっしゃるでしょう。それは企業の会計から払われるものですが、上手い具合にCPFの負担をすり抜けることができる!流石は華人!
ところがどっこい、政府もかなりスマートです。そのようなCPF逃れを防ぐため、「50ドルを超えるアンパオに対しても企業はCPFを払わねばならぬ」、としているのだそうです。まさに「蛇の道は蛇」です。
でも、疑問が。。。多分うちのお客さん、いや在星の日本人の方々があげるアンパオは、ほぼ間違いなく「個人のポケット・マネー」からの支出だと思うのですが。。。それにもCPF?
いえ、個人のポケット・マネーまではCPFはないでしょう。あくまでも企業会計からの支出、それも伝統的な慣習を逆手にとった“偽装アンパオ”は“実質ポーナス”ということでCPFを払わねばなりません。
昨日もこのCPFの話題でしたが、もしかしたら読者の皆さんに私は「CPFは悪者」という印象を与えてしまったかも知れませんが。本当のところはそうではなくて、私自身CPFはとても良い制度だと思っています。払い込みはすべて個人口座になっていますので、言い換えれば従業員は毎月給料の20%を貯金していると同じことなのです。強制的な貯金ですが(笑)。それに加えて企業も14.5%払ってくれますし、利率も銀行に預けておくより良いです。制度的には素晴らしいと思っています。一応念のため(笑)。